とある満月の夜、彼女とのデートの帰り、僕達は途中の公園にある小高い丘に登って満天の星空を眺めながら、取り留めのない会話を楽しんだ。
職場のこと、天文のこと、彼女の好きな映画俳優のこと、そういう他愛もない会話が僕にはとても幸福なことであった。
ふと気がつくと、先ほどまで僕達を明るく照らしていた満月が雲に隠れたのか何処かに行ってしまっていた。
僕達は闇に姿を包まれた。
「真っ暗闇になってしまったから、誰にも見えないよ。」
僕はそういうと彼女の頬に手を添えてちうと接吻した。
唇を離すと、接吻の間目をつむっていた彼女がゆっくりと目を開いた。
暗闇にうっすらと見える彼女の瞳の中には、先ほどまで夜空にあったお月様がやわらかな月光を放ちながら浮かんでいた。
2003/06/27 Fri (No.035)

 

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