金縛り
子供の時分の話。

私は心霊的なるものにトンと縁のない体質であったけれど、酷い臆病者だったので夜眠るときお化けの 類が怖くて怖くて仕方が無かった。怖い話を聞いた夜など一人で眠るのが怖くて、母親の布団に入れて もらえるよう頼んだものであった。もっとも、両親の教育方針らしく布団に入れてもらえることは一度と 無かったのであるが。そんな私であったが、ある時から毎夜の様に金縛りにあうようになった。
布団の中で眠っていると、急に胸のあたりにずしりとした重みがかかって身動きが出来なくなるのだ。無 理に身体を動かそうと思っても、胸の重みは増すばかりで段々息をするのも苦しくなってくる。顔の辺り には生暖かい空気が漂ってくる。生き物の気配だ。私は恐怖のあまり目をぎゅーとつぶって金縛りの解け るのをまだかまだかと待ちつづけるしかなかった。金縛りは大抵5分ぐらいですーと消えてしまうのが常で あった。

1週間も続いた頃だったろうか、私が布団に入って眠りに落ちると何時ものように金縛りがやってきた。
その時の金縛りは大層酷くて胸が本当に押しつぶされそうな重みで、遂には息が出来なくなって、私は口 を大きく開けてハァハァと大きく息をしようとした。すると、「ごめんね」と微かな声が聞こえたかと思 うと、首の辺りを強い力で締めつけられた。私は苦しさのあまりくわっと目を見開いた。そこには鬼のよ うな形相で私に馬乗りになって首を締めている母親の姿があった。

2002/07/23 Tue (No.026)

 

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