人を殺した人の話
強盗致死で刑務所に入っていたという人によると、人間はいとも簡単に死んでしまうらしい。昔、金策に困り果てたその人は、強盗するしかないととある金持ちの家に忍び込んだそうだ。運悪く居合わせた女中を手ぬぐいで縛り上げて、気絶させようと後頭部を拳銃の先で小突いたら、ぽこんと音がしてそのまま女中は死んでしまった。ということだ。殺すつもりはなく軽く小突いただけなのに、あっさり死んぢしまうものだから、こっちも吃驚してねぇ。騒いじまったもんだから、そのまま御用ですよ。と、その人は何だか照れくさそうに言った。

こちらは逆に人間はなかなか死なないという話。元過激派のKさんから聞いた話。もう随分前になるけれど学生運動が盛んな頃に、仲間の一人がどうにもスパイらしいという話になった。Kさんは4〜5人の仲間とでスパイ容疑の男を拉致して問い詰めることにした。最初の内は口頭で問い詰めていたのだけれど、男がしらを切りつづけるものだから興奮してきたKさん達は男に暴行を加えだした。代わる代わるに殴ったり蹴ったりを一晩中続けたけれど男は頑なに容疑を否認し続けて、夜があける頃にはKさん達も殴りつかれてへとへとになったらしい。ここからはKさんの話そのまま。

男はもう殴られすぎて顔なんか青黒いバレーボールみたいに腫れ上がってもとの面影ない状態でさ、もう喋りたくても声も出ない状態だったんじゃないかなぁ。俺たちも疲れきってたし、ここで開放して警察にいかれたら面倒だから処刑するしかないだろう。って話になって、アイスピックで刺し殺すことにしたんだ。で、最初に俺が刺すことになって、当然それまでに人を刺した事なんかないからびびってたんだけれど、まぁ仲間の手前もあるし、男の鳩尾あたりにアイスピックの先を当ててねエィって突き刺したんだよ。でもさ、死なないんだよ。刺し方が悪いんだろうってことで、次の奴が心臓を狙ってもう一度ぶすりとやった。でも、死なない。代わる代わる全員がアイスピックを突き刺したけれど、それでも死なない。仕方ないからロープを持ってきて首に巻いてね右と左からぎゅーって引っ張って絞め殺したんだ。あの時思ったのは、人間は覚悟が決まるとなかなか死なないということだなぁ。

2000/11/08 Wed (No.020)

 

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