月夜の晩、窓際に立って月夜を浴びていたら気が狂ったのだろう。突然、川端の小説のように自分の腕がぽろりととれたら面白かろうと思い、いろいろ左の片口のあたりをぐりぐりと弄繰り回している内に、ふとした拍子で左の腕が肩からぽろりと抜け落ちた。正気であれば大騒ぎであろうが、何せ気が狂っているものだから取り立てて感慨もなく、おや以外に簡単に抜けるものだなぁ。などと残った右腕で抜け落ちた左腕を持ち上げて仔細に眺めたり、いろいろ玩んだりしてみたが、じきに飽きてしまって、抜けた左腕をそのままに布団に入ってばたんきゅーと寝てしまった。

次の日の朝、目が覚めてみると部屋の何処にも左腕がない。窓の外を見ると向かいの家の屋根の上で一匹の猿が私の左腕を抱えて座っていた。私が窓を開けると猿はすっと立ち上がって、何処かへと去って行ってしまった。

1999/11/25 Thu (No.013)

 

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