不具者と芸術

作曲家のベートーベンが耳の聞えぬ人であった。ということは有名である。世の中には不具者であっても、その不具合を克服してリッパな芸術者である人たちが居て、取り柄と言えば五体満足であることだけという私にとって、全く頭の上がらないこと甚だしい。

先日、新聞で読んだ記事にこのような話があった。フランスのピアニストで生れつき6本の指を持つ者が居て、12本の指で巧みにピアノを弾くのだそうだ。ピアノなぞ鍵盤が沢山あって、10本の指ではとても数が足りるとは思えぬから指が多い者の方が得手なのやもしぬ。手の使えぬ画家が描いた絵というのも何処ぞの展覧会で観たことがある。手が使えぬので口に絵筆を咥えて描いたそうだ。物を長時間咥えて何かするというのは簡単なようで居て、実際には実に大変な作業であるらしい。私など呆けて口が無意識のうちに開いているのも気付かぬぐらいであるから、とても真似など出来ぬと思う。

別の話で、戦争前のコトだから大層昔の話になるが、浅草のレビューに出ている踊り子で片足の娘が居たということを聞いたことがある。片足でピョコピョコと器用に踊ってラインダンスなどをしていたらしいのであるが、これなぞはナカナカ想像も出来ぬ光景ではある。一度でヨイから観ておけば良かったと今更ながら後悔しているのである。

1999/09/24 Fri (No.010)

 

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