変わった人の話を二つ
変わった人の話。

私の友人にAという男が居るのだが、この男は少し変わった男であった。

ある日、私と何かの用事で駅前の喫茶店で会って話をしていた時のことである。何がきっかけでそのような話になったのかは忘れて仕舞ったが、女の話になった。Aは「今、僕は大層好きな人が居るのだ。寝ても醒めてもその人の事を考えているのだ。とうとう勢い余ってこのような事までして仕舞ったよ。」といって、自分の瞼をくるりとひっくり返して私に見せた。すると、其処には小さな女の顔が刺青されてあった。Aは目をつぶってうっとりとした顔つきでこういった。「こうしていれば、目を閉じると何時でも彼女の姿を眺める事が出来るのだよ。」

これは、知人に聞いた話。

「天王寺の方にやくざの親分が住んでいて、それは大層な刺青を背中一面に入れていて、それが自慢だったんだよ。親分は事あるごとに背中の刺青を他人に見せびらかしては良い気分になっていたのだけれど、良く良く考えてみると、刺青は自分の背中にあるのだから、親分は自分では直接その自慢お刺青を見ることが出来なかった。それに気付いてみると、親分はどうしても自分の目で刺青が見たくなってしようがなくなってしまったんだね。遂には医者の処へ掛け込んで、自分の背中の皮を引っぺがして、自分の情夫の背中の皮と交換して仕舞ったそうだよ。」

との事だそうだ。

1999/09/23 Thu (No.008)

 

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